Prologue

 あれはいったいいつの頃だっただろうか……
「わたしねー、大人になったらお兄ちゃんのお嫁さんになるのー。お兄ちゃんが世界で一番好きだから」
 そう、確かまだ幼稚園に行くか行かないかの頃、わたしが幼馴染みに向かって口癖の様に言っていた台詞。
 年の離れたその幼馴染みが、わたしは好きで好きで溜まらなかった。世界の誰より好きだった。
 隣に住むその幼馴染みとはほとんど毎日一緒に遊んで、たまには一緒にご飯を食べてお風呂に入って同じベッドで寝て……それが本当に楽しくて仕方がなかったのだ。
 そして口癖の様に好きだと連呼すれば、幼馴染みの彼はいつも笑って聞いてくれた。
 当時はそれが嬉しくてたまらなかったけれど、今にして思えば彼はそれを子どもの戯れ言だと思って相手にしていなかったのかもしれない。
 だけど、わたしとしては真剣だった。大人になったら絶対お兄ちゃんのお嫁さんになるんだと意気込んでいたから。
 その気持ちは結局大きくなっても変わらず、わたしはずっとずっと彼に思いを寄せていた。
 そして、ずっと思い続けていれば気持ちは伝わるものだと信じてもいた。


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