八××年────帝都、京都
その事件は突然に起こった。
時の帝、
首謀者としてあげられたのは時の左大臣、
しかし、それはある人物の完璧なまでの謀略であり、濡れ衣以外の何ものでもなかった。
忠臣と名高かった左大臣の謀反――この出来事は煽動的であり、噂は瞬く間に広がっていった。
九条嘉月は獄舎の内より自らの無実を訴え続けたが、誰一人としてそれを助けることはできず……――。
やがて九条は最愛の妻と二人の息子を残して無念の内に極刑に処せられた。
九条嘉月、享年三十四歳。早すぎる人生の終結だった。
朝廷はこの前代未聞の不祥事で荒れに荒れた。
稜黎帝はそれをきっかけに譲位し、東宮
貴之親王暗殺から始まったそれら一連の出来事を、人々は 『
帝都、京都に渦巻くは、光と陰、愛と憎しみ、栄えと衰え――静寂は決して訪れない。
すべての始まりは成安の変。
それを契機にある者は咲き誇り、ある者は散り果てた。
そのどちらであっても、関わった者は皆その運命を互いに絡み合わせた。誰もほどくことができないくらい複雑に、そして永久に……――。
物語の始まりはそれから少し後のこと。帝都での不思議な賊の出現によりそれは始まる。
──過去の事実を暴くため
──狂いを元に戻すため
──手折られた蕾を咲かすため
時を同じくして、複雑に絡み合った運命も再び動き始める。
長い時を経て、その複雑な結び目を解くために。
新たな変革を、時代は静かに待っている…………