「わたし……恋に落ちるなら、夢物語のような恋がいいな。そうね、例えるなら幻想曲みたいな恋?」
 昔、まだ恋も知らない中学生だった頃、わたしは幼馴染みにそう言った。
 幼馴染みは呆れ半分に笑いながらこう返した。
「夢物語なら、覚めたら終わるぞ?」
 それはまるで『お前には無理だよ』とでも言うかのように。
 そんな幼馴染みは、やがて一人の女の子と小夜曲のような恋に落ちた。
 優しく直向きに彼女だけを愛し続け……遂にはその思いを実らせた。
 そんな恋も憧れるし、羨ましいとも思う。
 けれど、わたしは……
 一生一度の大恋愛なら、やっぱり幻想曲のような恋をしたい。
 形式にとらわれず、自由に、そして夢想的に……
 まるで夢の国にいるかのような、素敵な素敵な恋を。
 
――そんな恋に、いつかは巡り会えると信じていてもいいですか?