「……ン……はぁッ……」
 環から与えられる刺激に深知留の口からは扇情的な声が漏れる。同時に、鮮やかな鬱血痕が肌に浮き上がる。
 既に深知留の体の至る所にはそれが残されている。
 環はゆっくりとした愛撫を与え続け、深知留をできる限り怖がらせないように気遣いながら彼女の中の女を目覚めさせていった。
 その一つ一つの愛撫に深知留は敏感に反応し、恥ずかしそうなくぐもった嬌声を上げた。深知留はそれを一生懸命堪えようと試みたが、漏れるように声は零れ出てしまう。
 やがて、環の手は深知留の大腿に添えられ、ゆるりゆるりと撫で上げていく。
 深知留は新たな感覚に驚き、慌てて足を閉じようとした。しかし、気づいた時には環がその間に体を割り込ませていてそれは叶わない。
 その手が中心にたどり着くと、環はショーツの上からそっと窪みをなぞる。
「あ……ン……やぁ……」
 そこは既に十分すぎるほどに潤っていて、なぞった通りにショーツに染みができる。
 深知留が自分を感じてくれたと思うと、環は自身が熱く昂ぶるのを意識した。
 我ながら単純だと思いながら、同時にもっと深知留を乱れさせたいという嗜虐的な欲が込み上げてくる。
「た…まき…さん……ふぁ……や……」
 深知留はあまりの恥ずかしさに一生懸命身を捩ろうとするが、環の力には叶わない。
 逃げられないのなら手を出して隠そうとすれば、それは環に意図も容易く捕らえられてしまう。しかしそれには以前のような強引さはなく、あくまで優しさで溢れていた。
 最終的に深知留が困ったような顔をすれば、環はそれでさらに煽られる。
 もっと彼女を追いつめたくて、もっと困った顔をさせたくて……
 そういう趣味など自分にないと思っていた環だが、深知留に限っては試してみたくなる。
 そして、環の長い指が深知留の中心にゆっくりと突き立てられた時だった。
「……あッ…んんッッ………」
 深知留の顔が明らかに歪んだ。
 今までとは似ても似つかぬ反応に環は驚いて手を止める。
「深知留……もしかして、初めてなのか?」
 今度は深知留の顔が羞恥で一気に赤くなる。
 環の案じた通り、深知留にはまだ経験がなかった。
 過去を振り返れば彼氏の一人や二人、いたことはある。しかし、いずれの者ともそこまでの行為には至らなかったのだ。せいぜいキス止まり。
 深知留はその経験の浅さを今更ながら悔やんでいた。
「ごめん……なさい。いい歳なのに……初めてなんて……面倒、ですよね……ごめんなさい……」
 あまりの羞恥からか、深知留は真っ赤な顔でその瞳に涙を浮かべていた。
「謝るところじゃないよ、深知留。それは誇るところ。……面倒どころか、嬉しいくらいだよ」
 環はそんな深知留がなお愛おしく、その涙を口付けて拭ってやった。








「ン……あッッ!! ……いやぁッ……」
 破瓜の痛みと衝撃に耐えて生理的な涙をボロボロとこぼす深知留を可哀想だと思いながら、環は止めてやることはできなかった。
 十分に慣れさせた上での挿入だったが、やはり痛みは避けられなかったようだ。
「んぅ……いたっ……!! や……助け……て……」
「深知留……力、抜いて。息を吐いてごらん」
 環の呼びかけに深知留は力なく笑うが、慣れない衝撃に体はがちがちに固まっている。息をする、というごく自然な行為でさえ、意識しないとできないほどに。
「大丈夫だから……。俺に全部任せて」
 深知留は涙に歪む視界で環の顔を見ていた。
 その眉間には皺が寄っていて、どこか苦しそうでさえある。
「たま、き……さん……」
「うん?」
「環さんも……辛い……ですよね? ……大丈、夫……ですか?」
 深知留は心配そうに環の頬に手を寄せた。その手は痛みのせいで震えている。
 自分が辛くてたまらないこんな時でさえ、人のことを思いやる深知留を環は彼女らしいと思った。
 反面で、辛いどころか快感を得ている自分に罪悪感さえ感じる。
――狂いそうなほど気持ちが良い
 まさかそんなことは言えなくて、
「大丈夫……俺は大丈夫だよ」
 環がそう言ってやると、深知留は安心したように微笑んで見せた。
「よか……った……」 
 それからしばらくして、環の全てを深知留が受け入れた頃、環は彼女の涙を優しく拭ってやった。
 環は深知留の困った顔を見たいと望んだものの、ここまで辛い涙を流させると流石に可哀想だと思ってしまう。しかし、もはや後には引けないのが男のサガ。
「ごめん、深知留。辛いだろうけど動くよ?」
 環の問いかけに、深知留は肩で呼吸をしながらも律儀に頷く。
「う……あぁ……ン……いたッ……」
 再び疼き始めた痛みに、深知留は涙を流す。それに、環はそっと口付ける。
 しかし、そうしたところで深知留の痛みが引くわけではない。
 環はできるだけ傷つけないようゆっくりと抽挿を繰り返した。
「……ン、ふぅ……」
 やがて何度か繰り返すうち、深知留の口から今までとは違う快楽に濡れた声が漏れてきた。頬を伝っていた涙もいつの間にか止まったようだ。
「ひぁん……あぁ……く、ン…はぁ……」
 深知留のそれはたまらなく可愛らしい声で、環は理性を保つのがやっとだった。
 女を抱いたことなど何度もある。嬌声だってそのたびに幾度となく聞いてきた。それなのに、深知留のそれは今までのどれとも違って環を怪しく掻き立てた。
「は…あぁ……た、まき……さん……」
 嬌声の合間、深知留は掠れた声で縋るように環を呼んだ。環は一度動きを止めて「どうした?」と優しく尋ねた。
 また痛み出したのかと不安になるが、泣いてはいないようだった。
 深知留は不安そうな表情を見せる環の頬にそっと手を寄せる。
「わたし……まだ……環さんに……きちんと、言ってません……でした……」
 深知留は乱れた呼吸を整えながら言葉を紡ぐ。
「何を?」
「あの……ね、わたし……」
 深知留は一度言葉を止めて、そして柔らかく微笑んだ。
「……環さんが……大好き……。初めてが……環さんで……幸せです」
 その瞬間、環の中で最後まで耐えていた何かが切れた音がした。
「深知留……誘ったら後戻りはできないって言ったろう?」
 環が、僅かばかり残っていた理性の限界を迎えた瞬間だった。